「OECD Learning Compass 2030(ラーニング・コンパス2030)」とは、OECD(経済協力開発機構)が2019年に公表した、「2030年に向けた学びの在り方」を示す枠組み(学習の羅針盤)です。
この枠組みは、誰かに与えられる学びをこなすのではなく、学習者が自らコンパス(羅針盤)を駆使して、目標へと歩みを進める(学んでいく)という考え方に基づいています。
具体的には、以下の5つの重要な要素で構成されています。
目指すゴール:「ウェルビーイング(Well-being)」
最終的な目標として、心身が健康で社会的に満たされた持続的な状態である「ウェルビーイング」を目指します。これには「個人」の充実だけでなく、「社会」、さらには気候変動などの課題を含む「地球」規模でのウェルビーイングという3つの多面的な視点が含まれています。
学びの前提概念:「エージェンシー(Student agency)」
ラーニング・コンパスにおいて極めて重要な概念で、「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく力」を指します。従来のような先生主導の学びからシフトし、学習者自身が自らの意思(内発的動機)でペースや目標を設定して学ぶ「学習者主導のアプローチ」を基本とします。
必要となる力(コンピテンシー)
ウェルビーイングに向かうために育成すべき力を、日本の学習指導要領における「資質・能力の3つの柱」とも似た以下の3つの大きな枠組みで提示しています。
- 知識(Knowledge): 学問的知識やデジタル・金融リテラシーなどの実践的知識。
- スキル(Skills): 思考力、問題解決、コミュニケーション、チームワークなどの実践的能力。
- 態度と価値観(Attitudes and Values): 倫理、持続可能性、多様性の尊重、社会的責任感などの内面的な指針。
また、複雑な現代において特出しして求められる「変革的コンピテンシー」として、「新しい価値の創造」「緊張やジレンマの調整」「責任を持つ行動」の3つを強調しています。
学びのプロセス:「AARサイクル」
学習者がコンパスを使って進むための学習モデルとして「AARサイクル」が提示されています。
- Anticipation(見通しを立てる)
- Action(行動する・学ぶ)
- Reflection(振り返る) PDCAサイクルの中長期的な改善手法に対し、AARサイクルは即時フィードバックによる実践的で短期的な評価と学びに適しているとされています。
教育の新標準(ニューノーマル)
こうした学習者主導の学びを実現するために、標準化された一律のカリキュラムではなく、学習者個々に合わせた「柔軟で適応可能な教育システム」が求められています。これを支えるためには、デジタル技術(ICT)のインフラとしての活用や、多様性と包摂性を担保する仕組みが必要であるとされています。
これまでの会話で触れてきた日本の「生きる力」や「資質・能力の3つの柱」とも方向性を同じくしており、これからの時代の教育環境を考える上での重要な国際的指針となっています
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